知る人ぞ知る「SF少女漫画」の世界。
70年代・80年代・90年代あたりに、たくさんの名作が生まれたジャンルです。でも最近はあまり見かけなくなりました。というか、ほとんど絶滅しているんじゃないでしょうか・・・・・・
私は大好きなんですが、世間的にはかなりマイナーらしいです。まわりに語り合える人がほとんどいません。なぜなのだ!悲しすぎるぞ!
というわけで「ハードなSF少女漫画10選」のご紹介です。ポイントは「ハードな」というところ。少女漫画だからって、いちゃいちゃラブラブ胸キュンものばかりだと思ってはいけません。「少女漫画?メロドラマみたいなのばっかりじゃん」という人たちの固定観念をふっ飛ばしたい。
絶対におすすめしたい名作10選です。ぜひ最後までご覧ください!
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「SF少女漫画10選」の選考ポイント
まず作品を選ぶときの基準について少しだけ書きます。選考ポイントは大きく分けて3つです。
1. ハードなSFであること
第一に「ハードなSF」でなければいけません。「ちょっとSFチックです」みたいなのはNG。
例えば、美少女アンドロイドを描いた「カラクリオデット」や、コメディ要素が強い「だぁ!だぁ!だぁ!」などは外してあります。どちらもSFとして分類できますし、面白い作品ですが、明らかに「ハード」じゃありません。
10選のなかにはファンタジー要素が強いものもありますが、基本的にどれも「ハード」です。男性が読んでも楽しめるような名作マンガを選んでいます。
2. 少女漫画として面白いこと
次に「少女漫画として面白いこと」も大事です。そうじゃなかったら、単なるハードSF漫画の紹介になっちゃいます。
繊細なタッチの絵、かっこいい男性キャラクター、切ないドラマ、心に響くセリフなどなど。男性のSF作家にはなかなか描けないような少女漫画としての魅力も必要だと思います。
3. 特定の時代に偏らないこと
最後のポイントは「特定の時代に偏らないこと」です。いくら昭和の名作が多いからといって、そればかり選んでいたら偏食気味になります。
例えば70年代から選ぶとなったら、ほとんどが「萩尾望都さん」の漫画になります。90年代なら「樹なつみさん」ですね。それはそれで良いかも知れませんが、ごく一部のファンしか楽しめない記事になってしまいます。
この記事の10選は、70年代から2000年代まで幅広いラインナップです。それに「同じ漫画家の作品は2つまで」としているので、色んな作風に出会えますよ。きっと参考になると思います。
「SF少女漫画10選」のおすすめ一覧
それでは、ここから10選の紹介に入っていきます。漫画選びのお役に立てれば嬉しいです。
なお、それぞれの漫画には「おすすめ度」を設定しています。詳しくは「おすすめ度について」というページをご覧ください。
1位 7SEEDS(2000年代)
🥈おすすめ度:85
★★★★
少女漫画× SFサバイバル。天才的なストーリーが光る傑作
あらすじ
ある日、ナツが目覚めると、そこはそこは荒れ狂う海の上だった。ここはどこ? 私はなぜここにいるの? 何が起きているのか分からないまま、無人島で恐ろしいサバイバル生活が始まる。
おすすめポイント
田村由美さんの終末SFサバイバル。見事に練りこまれた伏線やストーリーが素晴らしいです。
とにかく読む手を止められない面白さがすごい。ナゾの場所。ナゾの人物。ナゾの現象。分からないことだらけの状況から、少しずつ点と点がつながっていく展開が快感でした。
田村由美さんはストーリーを語るのがうまい!たった1度でも心を掴まれたら、もう読むのをやめられず、気づいた時には全巻読破。寝る暇さえありません。
SF要素もたくさん出てきます。
・コールドスリープ
・衝撃の「7SEEDS」計画
・地下シェルター
・ナゾと危険だらけの近未来サバイバル etc…
読みどころが多すぎて書ききれません。面白さ全快です!
「BASARA」や「ミステリという勿れ」などの他の田村マンガにも負けない完成度。SF少女漫画の頂点と言っても過言ではないと思います。全力でおすすめしたい作品です。
「7SEEDS」の感想・評価
注意点:極端なキャラクターが出てきます。自己主張の強すぎる女性がいたり、自分勝手な男性がいたりするので、合わないキャラが出てくるかもしれません。
2位 ぼくの地球を守って(80年代・90年代)
🥈おすすめ度:82
★★★★
私たち、同じ夢を見てるの?「前世」をめぐる切ないSFラブストーリー
あらすじ
ヒロインの坂口亜梨子は、同学年の男子2人が「毎晩同じ夢を見ている」ことを知る。その夢は「7人の科学者が月基地から地球を見守っている」という奇妙なものだった。しかもそれは前世の記憶であり、やがて2人は忘れていた記憶を取り戻していく。
おすすめポイント
「前世」をテーマにしたSFラブストーリー。どんでん返しの連続でラストまで目が離せない少女漫画です。ありえないはずの「前世」が少しずつリアルになっていき、いつの間にか引き込まれます。
私も最初は「前世?ありえないでしょ」とか斜めに構えて読んでましたが、そんなことはどうでも良いんです。気づけば「前世に何があったの?」と、どんどん引き込まれるし、やがてキャラクターたちの想いに涙をこらえながら読むことになります・・・・・・
月基地から地球を見守る7人の異星人たち。現世と前世のあいだでゆれ動く繊細な気持ち。後悔と悲しみ。愛情と怒り。ほんとにグッとくる作品です。
「ぼくの地球を守って」の感想・評価
注意点:「少女漫画」や「恋愛」の要素も強いです。今回のおすすめラインナップの中では、最も「ハードじゃない」作品だと思います。
3位 秘密 トップ・シークレット(2000年代)
🥉おすすめ度:80
★★★
被害者の「脳内」をのぞき見る⁈ 未来のMRIスキャナーをめぐるSFサスペンス
あらすじ
西暦2060年。警察は「MRIスキャナー」によって亡くなった被害者の脳から記憶を再現し、凶悪犯と戦っている。新人・青木一行もMRIスキャナーで死者の脳をのぞくが、そこにあったのは想像を絶する「秘密」の数々だった。
おすすめポイント
清水玲子さんの近未来SFサスペンス。
まず発想がすごいです。「被害者の脳内を見ることができる」という秀逸な設定が出てきます。
亡くなったヒトは何を見て、何を考えたのか? 脳内映像をモニターに映し出す場面には、何とも言えない緊張感があります。
「被害者の脳を見る」って、まるで墓荒らしというか、してはいけないことをしている感覚があるんですよね。そこがこの漫画のテーマでもあります。
果たして被害者の「秘密」を暴くことは許されるのか?あるいは生々しいシーンを魅せられた捜査官はまともでいられるのか?こうしたMRIスキャナーをめぐる重いテーマが持ち上がります。
被害者が守り通したかった「秘めた想い」さえも世間の目にさらされる未来。見事に練り込まれたSFサスペンスです。
「秘密 トップシークレット」の感想・評価
注意点:死者をテーマにしているので、少しグロテスクな描写があります。サスペンスやミステリーに慣れている人は大丈夫だと思いますが、苦手な方は注意してください。
4位 OZ(80年代・90年代)
🥉おすすめ度:78
★★★
伝説の科学都市「OZ」に向かえ! サイバノイドと過酷な旅に出るSFアクション
あらすじ
1990年の大規模紛争から31年後、旧アメリカ合衆国の科学者フィリシアは、失踪した兄が伝説の科学都市「OZ」にいることを知る。兄のゆくえを追うため、彼女はサイバノイド(人造人間)に導かれながらOZを目指す旅に出る。
おすすめポイント
樹なつみさんのSFアクション。少女漫画だけど、ちゃんとSFしてます。世界設定がリアルです。
・1990年の大規模紛争
・生き残ったのは人類の40%
・大きく6つに分裂したアメリカ合衆国
・食糧危機や治安問題
・近未来のサイバノイド etc…
装備やマシンも細かくデザインされていてびっくり。80年代の少女漫画とは思えないクオリティです。樹なつみさん、恐るべし。
あと「男性キャラクターがかっこいい」です。特に推したいのは青年ムトー。第1巻の表紙を見ていただければ分かりますが、表情がキリッとしてるんですよね。手足が長くてスタイル良いし。なんか華やかだし。そのうえ性格までかっこいいとか、もうやめてほしいです(歓喜)。
未来の社会問題や、人間とロボットの違いなど、深いテーマ性もある本作。男女を問わずおすすめできるSF少女漫画です。
「OZ」の感想・評価
注意点:ヒロインの性格が少し子どもっぽい(?)と感じました。わがままな言動もあるので、読む人によっては不快になるかもしれません。
5位 イティハーサ(80年代・90年代)
🥉おすすめ度:77
★★★
古代SF神話ファンタジー。美しい感動をもたらす大河ドラマ
あらすじ
1万2000年前の古代日本。人々はまだ神と接することができた。しかし、やがて悪神たちと善神たちがの対立が激しくなり、人々は神々の争いに巻き込まれていく。
おすすめポイント
水樹和佳子さんの古代SFファンタジー。10年以上の歳月をかけて完成した超大作です。
まず世界観がすごい。一言でまとめるなら「1万2000年前の古代日本SF神話大河ファンタジー」みたいな感じになります。かなり複雑なので、おそらく1回読んだくらいでは理解できません。
大きく分けると3種類の神々グループがあります。
・目に見えぬ神々
・目に見える善神(亞神)
・目に見える悪神(威神)
このうち「惡神vs威神」の争いが激しくなっていて、古代人たちもそれに巻き込まれていきます。
一見すると古代ファンタジーですが、世界観はSFに近いです。ものの考え方が「科学的」なんですよね。設定が考え抜かれているので、とにかく圧倒されます。
「善とは?」「悪とは?」「神とは?」「人間とは?」壮大なストーリーのなかで、色んな問いかけについて考えさせられる作品。美しい感動をもたらしてくれるSF少女漫画です。
「イティハーサ」の感想・評価
注意点:本格的な「王道SF」ではないです。神様が出てくるなど、ファンタジー要素もあるので注意してください。
6位 バルバラ異界(2000年代)
🥉おすすめ度:76
★★★
7年も眠り続けている少女の夢世界「バルバラ」。ゾッとするほど怖いSF少女漫画
あらすじ
他人の夢に入り込める男「渡会時夫」。彼は7年間眠り続ける少女の夢に入り、そこで「バルバラ」というふしぎな世界を目撃する。しかもその世界は、彼の息子が空想した架空世界とシンクロしていることが判明する。
おすすめポイント
萩尾望都さんの近未来SF。恐ろしい設定にゾッとします。ざっと書き並べてみたんですが、不吉すぎて寒気がしますね。
・火星生命体
・プリオンタンパク質
・遺伝子テクノロジー
・不老不死
・ポルターガイスト
こういうのがたくさん出てきます。もうこれ、少女漫画とかのレベル超えてますよね・・・・・・。萩尾さんの恐ろしい知識量・発想力に圧倒されます。
しかも設定だけじゃなくて「人間ドラマも怖い」です。ギクシャクした親子関係。孤独なキャラクター。どろどろした心理劇。とにかくダークで胸に刺さります。
怖すぎて「SFホラー」に分類したいほどの怪作。ナゾだらけの世界観に引き込まれて一気読み間違いなしです。
「バルバラ異界」の感想・評価
注意点:情報量がかなり多くて、ごちゃごちゃしているので混乱します。読み始めたばかりの段階だと「なんだこれ?」ってなるかもしれません。
7位 11人いる!(70年代)
🥉おすすめ度:76
★★★
SF少女漫画の原点。70年代のマンガとは思えない衝撃作
あらすじ
宇宙大学の受験にやって来たタダトス・レーンは、「宇宙船で53日間過ごす」という最終試験を受ける。しかし宇宙船に乗り込むと、定員の10人よりも多い「11人のメンバー」がそろった。受験生たちは、ナゾの11人目をめぐって疑心暗鬼になりながらも、53日間の試験を乗り越えようとする。
おすすめポイント
萩尾望都さんの宇宙SFミステリ。SF少女漫画を語るうえで絶対に外せない傑作だと思います。とにかく完成度が高く、面白い要素がたくさんあります。
・「11人目は誰なのか?」という謎
・宇宙船という閉鎖空間
・犯人をさがすドキドキハラハラ感
・予想外のアクシデント
・緊張のタイムリミット etc…
ストーリー、設定、キャラクター、画力など、あらゆる点で一級品。ほとんど非の打ち所がない面白さです。はじめて読んだ時には「これが70年代の少女漫画なの⁈」と大きな衝撃を受けました。
最後までページをめぐる手が止まらないSF少女漫画。美しいラストまで一気読みしてほしい作品です。
「11人いる!」の感想・評価
注意点:70年代の漫画なので古いです。画力とかコマ割りに違和感をおぼえる人がいると思います。とくに最近の作品に慣れている人にとっては、物足りないかもしれません。
8位 CLOVER(90年代)
🎖️おすすめ度:75
★★
機械と魔法のSFファンタジー。謎の少女をめぐる「未来のおとぎ話」
あらすじ
元軍人の主人公・和彦は、最高評議会のメンバーの1人から「少女・スウを妖精遊園地まで送り届けよ」という依頼を受ける。その依頼を引き受けた和彦は、さまざまな刺客に邪魔されながらも、ふしぎな少女を守りながら目的地へと向かう。
おすすめポイント
CLAMPさんのSFファンタジー。とにかく不思議な世界観がすごいです。SFともファンタジーとも言えない神秘的な雰囲気に引き込まれます。
・機械文明
・魔法使い
・壮大な実験「クローバー・リーフ・プロジェクト」
・謎だらけの少女
・機械をコントロールする能力 etc…
メカニックなところは「サイバーパンクSF」に近いんですが、ふしぎなパワーが出てくるので「魔法ファンタジー」にも似てます。まるで「未来のおとぎ話」のようなSF少女漫画。CLAMPさん独特の世界が広がってます。
とにかく美しくて切ないんですよね。まるで詩を読んでいる時のように、心が揺さぶられます。
・キレイな絵
・繊細なデザイン
・「しあわせになりたい」と繰り返しつぶやく少女
・切ない旅の終わり
SF少女漫画の魅力がこれでもかと詰まっています。ふしぎな読書体験をぜひ味わってほしいです。
「CLOVER」の感想・評価
注意点:未完のマンガです。今のところ続編が出る気配はなく、打ち切りのような感じになっています。
9位 獣王星(90年代・2000年代)
🎖️おすすめ度:74
★★
過酷なSFサバイバル。恐ろしい惑星「キマエラ」に隠された衝撃の真実とは⁈
あらすじ
西暦2436年、バルカン星系に人類がテラフォーミングした未来。その首都に住む主人公トールは、ある日何者かに襲われ、恐ろしい惑星「キマエラ」に追放されてしまう。そこで彼は過酷な自然環境とたたかいながら、「キマエラ」に隠された真実を知ることになる。
おすすめポイント
「OZ」の樹なつみさんによる惑星SFサバイバル。かなり過酷なドラマです。
まず自然環境が怖い。肉食植物がたくさん出てきます。
・ドーム状の樹海をつくる「ムーサ」
・樹液で生き物を襲う「カリプト」
・地面の下から襲いかかる「ベラ・ソナー」
・毒のある寄生植物「エズル」
こういう植物たちが本気で襲いかかってきます。弱肉強食の惑星なので過酷です。びっくり箱みたいにいきなり襲ってくるやつもいるし、こんなの怖すぎる・・・・・・。もはやジュラシックパーク状態ですね。
あと、男性キャラがかっこいいです。「OZ」の紹介でも書きましたが、樹なつみさんの男子はキリッとしてるんですよ、キリッと。
特に魅惑的なのは「サード」という男性キャラクター。黒の長髪。褐色肌。頭のキレが良くて、女性もだましちゃう悪い男。でもかっこいいです。そんなに色気をぷんぷんさせないでいただきたい(笑)。
宇宙規模の壮大なストーリー、深まるナゾ、「獣王」の座をめぐるバトル、衝撃のどんでん返しなど、とにかく読みどころ満載! アニメ化もされており、全11話でサクッと見れます。漫画好きにもアニメ好きにもおすすめしたい作品。
「獣王星」の感想・評価
注意点:ちょっとキャラの掘り下げが浅いと感じました。奥深いバックストーリーとかはあまり出てきません。
10位 YASHA 夜叉(90年代・2000年代)
🎖️おすすめ度:73
★★
主人公に襲いかかるテクノロジーの影。重厚なバイオSFドラマ
あらすじ
沖縄の天才少年・静は、ある日突然さらわれ、アメリカに連れていかれる。その事件から6年後、彼はウイルス学の博士となっていた。しかし、やがて双子の弟・凛が現れると、遺伝子テクノロジーをめぐる壮大なドラマが始まる。
おすすめポイント
「BANANA FISH」の吉田秋生さんによるバイオSF。かなり重厚なドラマです。
・遺伝子テクノロジー
・クローン技術
・謎の天才ドクター
etc.
「こんなのよくあるやつじゃん」って思うかもしれないですが、少女漫画としては珍しいと思います。「バイオSF少女漫画」なんて、なかなかお目にかかれないんじゃないでしょうか。
ストーリーは「天才美少年・静(セイ)が狙われる」というところから動きはじめます。静がナゾの男たちにさらわれて、アメリカでウイルス学の博士に。やがて色んな国の政府も絡んできますし、びっくりするほど重厚なドラマに仕上がっています。
双子の静と凛。2人にしのび寄る陰謀。読み応えバツグンのSF少女漫画です。
「夜叉 YASHA」の感想・評価
注意点:作者の代表作「BANANA FISH」をリメイクしたような感じです。そちらを先に読んでると、少しがっかりするかもしれません。
【まとめ】ハードなSF少女漫画10選
以上、「ハードなSF少女漫画10選」のおすすめ紹介でした。
どれも少女漫画とは思えないほど硬派な作品ですよね(笑)。
一覧をまとめるとこんな感じです。
🥈傑作(おすすめ度:81〜85)
7SEEDS
ぼくの地球を守って
🥉良作(おすすめ度:76〜80)
秘密 トップ・シークレット
OZ
イティハーサ
バルバラ異界
11人いる!
🎖️入選(おすすめ度:〜75)
CLOVER
獣王星
YASHA 夜叉
とくに田村由美さんの『7SEEDS』は全力でおすすめしたいです。
アニメ化があまり上手くいかなくて悪いイメージを持っている方もいるかもしれませんが、漫画は傑作なので安心してください(^^)
どれも性別や世代を問わず楽しめる作品です。ハードな漫画を求めている方はぜひ!